ペンローズの階段は、どこまでも

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 学校の六限目の授業が終了した。  クラスメイトが慌ただしく帰宅していく中、少年はマイペースに鞄に教科書とノートを入れた。  やせ形のオーバル型メガネをかけた少年だ。  小ぶりで丸みのある形状のメガネをかけているためか、落ち着いた優しい印象がある。取り立ててカッコよくない目立たない男の子。  アイドル似でもない、女の子に黄色い声を上げられる美少年でもない。  これなら小太りな方が印象があって記憶に残りやすい。印象が薄いだけに、外面の採点はマイナスだ。  酷な言い方をすれば、  イモ。  それは、決して明るく、良いイメージがない表現だ。  ……でも、何だろう。  イモは形が悪く土にまみれ汚れているが、この少年に当てはめると別の印象を受ける。  素朴で温かく、日差しを受けて香る土の匂いが伝わってくる。  そんな、少年だった。  名前を佐京光希(さきょうこうき)と言った。 「光希」  帰宅しようと席を立った光希は、呼び止められて教室を振り返った。  一人の少女が居た。  ショートヘアの少女。  気さくなボーイッシュな雰囲気は、さわやかな印象がある。  青空を見上げ時に感じる、その快いさまは清々しく、それが明度となって輝いている。  見方によっては童心を持った男の子のような様子もあるが、イタズラっぽく笑った時に覗く八重歯は、子猫のような愛らしさがある。  やんちゃで元気な様子が魅力的な少女であった。  名前を日下由貴(くさかゆき)と言った。 「由貴……」  光希は迷惑そうな表情を隠そうとしたが、その色が滲み出ていた。
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