苦手な数学?

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苦手な数学?

 結局、わたしは一時限目の始業ベルまで教室には入れませんでした。  わたしが入ると、一瞬、教室が凍り付いたような気がしました。  本当に理解できない。  でも、ここでその疑問を周りにぶつけたら「変な奴」と思われて、ますます空気が悪くなる。その方がわたしは怖いので、黙っているしかありませんでした。 「では、この問題を……」  一時限目は苦手な数学です。  数学担当のがみんなを見渡しています。  当てないで欲しい……と、思っていると、 「――では、伊豆。前に出て解いてみろ」  最悪……。  なんでわたしなのだろう。  苦手だって言うことを解っているくせに……とにかく、わたしは黒板の前に立つしかないです。  黒板には、黒縁メガネが書いた難解な公式と図形が並んでいます。  解るはずが……あれ?  チョークを取ると、わたしはなんだかその小難しい問題の解き方や回答が、すらすらと頭の中に浮かんできます。  その浮かんだモノをそのまま黒板に書きました。と……。 「正解だ! さすが――だ」  何か言ったような気がしました。だが、最後の言葉が聞き取れません。  クラスのみんなを見ると「あっ、言っちゃった」と言うような顔をしていますが、何のことだか……。 「スマン。伊豆、席に戻るように……」  いつも生徒を見下している黒縁メガネが、何故か謝りました。
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