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聞こえない単語?
その後も、科学、国語、英語の授業がありました。
そこでも、この前まで解らなかったことが、すらすらと妙に解ってしまいました。
わたし、ホントにどうなってしまったのだろう。
こんなに頭が冴えるなんて、どう考えてもおかしい……なにか、連休中にあったのでしょうか……。
あれ?
ふと思い出してみましたが……連休中、わたし何をしていたのだっけ?
思い出せない……
なんでだろう。
たしか、家族で旅行に行く話をしていたはずなのに、行った記憶が……。
『キンコンカンコン! キンコンカンコン!』
あっ、もうお昼か……。
でも、なんだかお腹も空いていないし、妙に眠たいような……。
少しだけ、眠ってから……
『キンコンカンコン! キンコンカンコン!』
あれ? もう午後の時間?
お昼ご飯を食べ損なった……あれ? 今日ってお弁当を持ってきたかな?
もういいか、次の授業が始まるから……。
***
その日以来、わたしの頭は冴えていました。解らなかった問題もすらすらと……。
問題だけではないです。
運動神経も飛躍的に上がりました。
バレー部エースであったの伴さんのスパイクを受け止めたり、反対に彼女がわたしのを取れなかったり……。
何かおかしい、とは思いつつもわたしは異変を楽しみました。
クラスの人達も最初は遠巻きに見ていたのですが、少しずつ今までのように接してくれるようになったのです。
そろそろ暑くなってきて、まもなく夏休みといった時でした。
今まで出来なかったことが、すらすら出来るようなったわたしは、のぼせ上がっていたのかもしれません。
わたしは……好きだった男子に告白しました。
でも……彼の答えは……、
「気持ち悪い。止めてくれ。――に告白されるなんて」
拒絶されました。
そしてあの時、黒縁メガネが言い放ったときのように、一部の言葉が聞こえなかったのです。
『君はきっと気づかないだろうね』
最近、聞こえなかった言葉が再びわたしの頭の中に現れました。
何を気づかないというの?
わたしには解らない……。
それよりも彼に拒絶されたことがショックで……あれ?
なんでだろう……泣きたいのに、目から涙がこぼれない。
ショックなはずなのに……。
わたしはひとり、とぼとぼと家に帰りました。
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