1人が本棚に入れています
本棚に追加
お母さん? お父さん?
何故、わたしは涙を流せなかったのか?
自分が理解できなくなってきていました。
「――ただいま」
家に帰っていると、何故か夕方なのに部屋の明かりが付いていませんでした。
「……お母さん?」
ひとり薄暗いリビングのソファーに横になっているお母さんを見つけました。
泣いていました。
すすり泣く声が聞こえてきます。
「どうしたの?」
わたしはお母さんに近づいて、手を取りました。が、突然、わたしの手を払いのけたのです。
「……お母さん?」
「もういいわ! 家族ごっこなんて終わりよ!!」
お母さんは、そう叫びながらわたしを指さし、
「人形にジュンのフリをさせるのはお終いよ!」
何のことだか解りませんでした。
家族ごっこ? どういうこと?
「お父さんは? お父さんはどうしたの?」
ふと、わたしはお父さんのことを思い出しました。でも、声を出してから、不思議なことをようやく気が付いたのです。
あの日からお父さんを見ていないことを……。
「――あの人は今日……」
「――今日?」
お母さんは流したモノをすすり上げ、涙を拭くと、
「――プログラム終了。停止コード――」
最初のコメントを投稿しよう!