実験体の回収の要請を受けて

1/1
前へ
/8ページ
次へ

実験体の回収の要請を受けて

「説明したはずです。このロボット()はあなたの娘さんの全記憶を移植していると……」 「……」 「娘さんが昏睡状態でいる間、この子が変わりとなって学校生活を過ごす。  それを、意識を取り戻した娘さんにフィードバックする。  そうすれば、あの事故のことも記憶から消えて、何もなかったように今後の人生を歩むであろうと……」 「……」 「昨日(さくじつ)、旦那さんが、亡くなられたことはお悔やみ申し上げます。  ですが、あなたのお望み通り、娘さんと平凡な生活を続けていれば……」 「――必ず娘が意識を取り戻すというのですか……」 「えッ?」 「あなた達は、娘を利用して実験をしているだけじゃないですか!  娘の脳に妙な機械を差し込んで!  あのロボットがわたしの娘? 言葉通りに動いて停止するのが、私の娘ですか!」 「……」 「――もう持って帰ってください。そんなロボット(ガラクタ)は、私の娘ではありません!」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加