実験後の雑談

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実験後の雑談

「主任。そのご家族はどうなったのですか?」 「ああ……結局、娘さんは昏睡状態から回復しなかった」 「――今でも植物人間?」 「いや、冷凍保存に回ったよ。未来の医療に任せると……」 「――未来の医療……。そんな安直なことを選んだんですか……」 「未来の医療は、結局、研究者や科学者(我々)が頑張ることなのになぁ……  我々はこの子達に昏睡状態の患者の記憶をそっくり移植して、代理として家族に提供する。  家族はもちろん、患者本人も何ごともなく過ごせるんだ。  それで昏睡状態から回復したら、この子が蓄積した記憶を本人に戻す。  苦しい思いもしない素晴らしい計画なのに、なかなか理解されないモノだ」 「――それで、今回のロボット()は……」 「奇跡的に破壊等もなくデータ回収に成功したよ。感情の起伏もあったようだ。  ただ、もう少しAIには人間的な感情がほしいね。  たとえば、年頃の少女が意を決して告白したんだよ。それで振られたんだ。涙のひとつぐらい流せないと……」 「主任も詩的ですね」 「君はきっと気づかないだろうが、我々はこの子達の神にもなるかもしれないんだよ」 「神……そんな大それたものになるんですかね」 「この子達で蓄積したデータを元に、新しい人類(AI)を造り出そうとしているんだ。  そう言ってもおかしくはないだろう」 〈了〉
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