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大学を卒業して、縁もゆかりもない無い土地での就職が決まってから、あんなにしつこい程に傍にいた舞は、顔を見せなくなっていた。
不馴れな社会人生活。日々に忙殺されて、寝るだけに帰る家。起きたら出勤の毎日は、逆に健全さを彼女にも与えたのかもしれない。
人が変わるには、やはり環境というものが少なからず大事なのだろうと改めて思う。
結局、皆さんの想像した通り、彼女は痛い目をみることになった。彼女を幸せにしてくれる人は、勿論、先輩ではなかった。
泣きに泣き、存分に傷付き、悩み、結局は別の男に依存した彼女も、社会人になった。
就職を機に遠距離になった彼氏とは、呆気なく別れた。
顔を会わせなくなってから、トラブルメーカーが居なくなったとほっとしていたが、それも二年三年と過ぎれば、時々は思い出してやる。少なからぬ哀愁を持って。「幸せになりたい」と泣いていた、彼女のことを。
彼女は、何処に行ったのだろう。
今、何処にいるのだろうか。
幸せになれたのだろうか。
もしかして、と思うこともある。
それとももしかして、まだ、眠っているだけなのだろうか、と。
彼女に会いたいと思うようなことはない。何度も言うが、私は彼女のことが好きではないし、彼女はトラブルしかもたらさない。愛されたがりの、大バカものだ。救いようがない。
だけどきっと、こうして、筆をとったのは、そう。
やっぱり少し、彼女がいなくなったことに、ぽかりと空いた小さな……本当に、小さな、穴を埋める為なのかもしれない。貴女が幸せになっているのかどうかが知りたい。それとも、もう、居なくなってしまったのだろうか。あんなに感情的だった彼女は、それでもちゃんと、大人になれたということか。
今になって私は、居なくなってしまった(かもしれない)彼女のことを、書き留めたいと思った。
私達の事を。沢山の人を傷付けてしまった過去の、私達サイドの想いを。知って欲しいと思ってしまった。
それはまさに。やっぱり、他でもない私が、彼女自身と言うことなのだろうと思う。
だからこそ私は、ペンネームを『舞』にしたのだろう。
舞、貴女はまだ、私の中にいますか?
会えなくてもいいけど。
時効だから、ちょっぴり白状するとね、
ロングスカートはやっぱり、ちょっと、期待して履いてた……かもね。
最近は、めっきりパンツスタイルです。
ー完ー
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