おにぎりと兄妹

10/51
158人が本棚に入れています
本棚に追加
/194ページ
 花金? 聞きなれない言葉に、ひよりは首を傾げる。気づいたらなくなっていたプレミアムフライデー、いわゆるプレ金とは違うのか。 「花金世代の先輩方がいるからね」  中館が軽く肩をすくめる。  花金。あらゆる話題に強い福子なら知っているだろうか。後で聞いてみようと頭の片隅にメモする。  中館さん、と亜咲が遠慮がちに声をかける。 「礼音くんのこと、何か聞いてますか?」 「何かあった?」 「礼音くんと仲がいい貴也くん、覚えてます?」 「今度、結婚する貴也?」 「そうです。その貴也くんが、礼音くんと連絡がつかなくて心配してるんです。礼音くん、昔ちょっと……」 「あぁ……。俺は何も聞いてないけど、あとで近藤さんに連絡取ってみるわ。ほかに誰か、礼音と連絡取ってそうな人は?」  亜咲はゆるゆると首を振る。 「わかった。礼音のことは、俺の方でも気を付けておく。温かいうちに食べな」  中館に促されて、亜咲がお椀に口をつける。連絡がつかない礼音を気にかけているのか、その表情はさえない。 「貴也の結婚式、レストランウェディングなんだね」
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!