たゆたう便り

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一時間半ほど前、千優は自宅から少し離れた海岸にいた。 深い理由はない。凪いだ海を見れば心が穏やかになれるかもしれないと思った。ただ、それだけのことである。 平日の昼間、南中高度が一番高い時間に出歩く人はそういない。 だだっ広い砂浜に、見える人影は疎らだった。 土日になれば、家族連れやカップルで賑わう場所だ。千優にも恋人はいるが、ちょっとやそっとで会えるところにはいない。 相手が隣にいる人達と比べてしまって、心が置いてけぼりになる。 だから、静かな今の状況がちょうどいいと思った。 千優はコンクリートの階段に腰を下ろすと、白い日傘でギラギラと照りつける太陽を淡く受け流しながら、海原の青をぼんやりと眺めていた。
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