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2
子供は手足を拘束し、目隠ししてある。
今、俺の横に座っている。
さっきから浮かぬ顔でうなだれている。
俺は子供の顔を手で押し上げて、前を向かせた。
「おい、しっかりしろ!」
俺は子供に怒鳴りつけた。
すると仲間の1人がこっちを見た。
「大丈夫か?その子?」
奴は心配そうにそう言った。
「大丈夫だよ。ビビッてやがるだけだ」
「それにしても…。子供に怒鳴るなよ。怖がるだろう」
奴はそう言って俺を咎めてきた。
「ふん!」
ちょっとムカついて俺はそう言ってから、席を離れた。
代わりに奴が子供の隣に座り、
「お腹すいてないか?」
と甲斐甲斐しく聞きながら、カバンから菓子パンを取り出して子供に食べさせた。
俺は苛々しながらタバコをふかした。
金の受け渡しのことで少し気が立っていた。
「金の件、大丈夫かな?」
さっき誘拐の電話をかけた仲間が、不意に俺にそう聞いてきた。
「大丈夫だろう。だが油断は禁物だ」
俺はそいつを睨んでそう言った。
「そ、そうだな。じゃあ計画通りに話を進めるぜ」
「ああ」
さあ、本番はこれからだ。
まずは何としても金だ。
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