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「そうなんですか?まぁ私にはよくわかりませんが」 俺はそう言って、少々露骨にうんざりした顔をした。 「それで、その強盗の線なんですがね。実はそれもあまり可能性が低いと思っておるんです」 越前屋は興味なさそうにしているこちらには一切構わず、そうまた話しかけてきた。 「何故です?」 「だってその部屋には金目のものが何もありませんでしたからね。しかもその部屋が入っている建物自体が、いかにも何か金目のものがありそうな感じは一切しない、ほとんど廃屋同然の建物なんです。そんなところに強盗が入るのはちょっと考えにくいですよね」 「逆にそういうところに大金を隠したりするのも盲点なんじゃないですか?」 「いや、その可能性は薄いですね。そんな隠し場所になるようなものが何もありませんでしたから」 越前屋はそう言うと、また妙にニヤニヤ笑いをした。 「そうですか」 「つまり、そこに居たもう一人の人物が全員を殺したという線が一番濃厚だということです。残念ながら廃屋に近いビルで、場所的にもまだ防犯カメラがちゃんと設置されていない地域だったので、犯人の姿は全く確認出来ませんでした。たぶんあの廃屋のようなビルみたいな場所に被害者たちが集っていたのは、防犯カメラがその近くにあまりないことをしっかり認識してのことだったと思います」 「前科のある人たちの集まりだからですか?」 「それもありますが、これは私の憶測ですが、たぶん被害者たちは、あの廃屋に近いビルに集まって、何か今現在、犯罪的なことを行なっていたという可能性が高いと思いますね」 「ほお」 「それが何なのか?最近流行のオレオレ詐欺とかではないみたいです。その手の犯罪現場を前に見たことがありますが、それとはだいぶ違ってましたからね」 「はあ、私にはよくわかりませんな」 俺はあくまで素知らぬ素振りでそう言って、何もない顔をした。 内心では、もはやそういう訳にいかなかったが…。 背中に冷や汗が流れ始めた。
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