52人が本棚に入れています
本棚に追加
28
「それでですね、まぁ、たまたまなんでしょうけど、これ、あんまり公にはできないんですが、実はちょっと誘拐事件のようなものがありましてね、すいません、これ、警察的にはオフレコなんで、私が話したって言わないでくださいね」
そう言うと越前屋は気持ち悪いウィンクを俺にしてきた。
「オフレコなら私なんかに話さなきゃいいじゃないですか」
「まあまあ、そうなんですけど、私どうしても自分の憶測が捨てられませんでしてね、被害者たちが仮に、今現在、何か犯罪的なことを行っていたのかもしれないとするならばですよ、このちょうど今起きている誘拐事件と関係があるんじゃないかとちょっと思いましてね」
越前屋はさも嬉しそうな笑みを浮かべてそう言った。
「へえ…」
「ただ私、誘拐事件の方は、デパートの大北海道展に行って買ってきたしっとりバームクーヘンの差し入れをあっちの捜査員にはしましたけど、基本関係ないんですよね」
「そうなんですか」
そんなこと俺が知るか。
「それでですね、ちょっとそっちの捜査の方で失敗したと思い込んでて凹んでる部下がいましたんで、まあ彼に色々調べてもらったんです。彼としてもあっちの捜査をずっとやってるのはちょっと辛そうだったんでね、私が現実逃避させてやろうと殺人事件の捜査の方を依頼したら、いつもはブーブー文句ばっかり言うくせに、そりゃあもう、随分積極的に二つ返事でやってくれましたよ」
越前屋はまた、ニヤニヤを超えてニタニタ笑いながらそう言った。
そりゃ部下の弱みにつけ込んでるだけじゃないのか。
「それで彼が調べたところによるとですね、あの被害者たちは、過去に詐欺やら麻薬不法所持やら傷害事件やら、まあ様々な事件を起こしていましたが、誘拐事件の容疑で取り調べを受けたという記録もあったようです。だからまぁ、今回はちょっとそれっぽくね?と疑ってみたわけですよ、これが」
越前屋はさも楽しそうにそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!