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俺はあくまで素知らぬ素振りで、越前屋の話を大して興味がないような顔をして、黙って聞いていた。 「で、その誘拐事件の方なんですがね、私はあくまで関係ないんですが、これはちょっと身内の恥をさらすようであんまりお話ししたくないことなんですが…」 「なら私に無理に話さなくていいですから。捜査上の極秘事項でしょ、それ」 「ええ、まあそうなんですがね、お恥ずかしい話なんですが、私は関係ないんですけど、実は誘拐犯との現金の受け渡しの現場をですね、警察は押さえることが出来ませんでして」 「はあ」 「まんまと身代金を犯人に持っていかれました次第で」 「そうなんですか」 「ええ。私は関係ないんですけど。なんでも公園のトイレに身代金の入ったボストンバックと連絡用に犯人から渡された携帯電話を置いておくようにという指示を、誘拐されたお子さんのお母さんが犯人から受けてましてね、お母さんはその通りにしたようなんですが、ところがですね…」 「はい」 「その公園のトイレの中の3つある個室のうちの真ん中の個室にちゃんと置いてきたはずのお金の入ったボストンバックと携帯電話が、いつの間にか消えてしまったんですよね」 「へえ」 「まるで手品というか、神隠しというか、なんだか狐につままれたようなオカルトみたいな話なんで、それでうちの部下も訳が分かんなくなってしまって、えらく凹んでしまったわけです」 そんな部下に上司がつけ込むなよ。 「それでですね、まぁ私、基本関係ないんですけど、ちょっとその金の受け渡しのあった公園のトイレという所に行ってみたんですよ」 「そうなんですか」 「ええ。まぁそれでちょっとだけ調べてみたんですがね。幾つか気になったことがあったんで、別の者にも頼んだりして色々と調べてみました」 「はあ」 「そしたら分りましたよ。どうやって犯人は身代金の入ったボストンバックと携帯電話を持ち去ったのか?ということが」 「そうなんですか?」 「ええ」 越前屋は福々しい笑みを浮かべて、そう頷いた。 俺は、さらに意識して素知らぬ素振りのような顔をした。
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