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「金は用意できたのか?」
仲間の男は相手が電話に出るなり単刀直入にそう言った。
飛ばしの携帯を持つ手の甲に彫られた蛇のタトゥーの部分が痒いのか、奴はさっきからその部分を反対の手でやたら掻いていた。
藪蚊にでも刺されたのか。
「なんとか用意しました」
電話に出た誘拐した幸太の母は、緊張した様子でそう言った。
「よおし。じゃあ、さっそく取り引きだ。警察には通報してないだろうな?」
「は、はい、それはもう…」
「通報したら子供は殺すからな」
「は、はい!それだけは…」
「金はボストンバッグに詰めて、明日、あんたが運べ。いいな!」
「は、はい」
「詳細はまた明日連絡する」
奴はそう言うとすぐに電話を切って、ミネラルウオーターのペットボトルをガブ飲みした。
今のところ計画通りだ。
尤も、警察に通報していないというのは怪しいものだが。
俺は明日に向けて一眠りしておこうと、タバコの火を消してから、寝袋の中に入った。
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