魔法使い

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魔法使い

 彼女は掃除が苦手だった。  魔法の研究が好きで、気を失うように眠るまで続ける。ベッドに移動する時間がないこともあり、そのまま実験室で寝てしまう。  だから片付ける時間がない。  でも、使いたい時に使いたい物がどこにあるのかは、だいたいわかっていた。  アウトドア派で外に出て材料を探すのも嫌いではない。勇者たちと旅に出て珍しい物を集めてくる。  今回もどんな珍品に出会えるかと、ワクワクしながら支度をしている。でも完璧主義的なところもある。魔法の力があってカンもよく、研究も好きなのですごい魔法が使える。だから、荷物がどんどん増えていく。  それを大きすぎもなく小さすぎもないカバンに詰め込む。立体パズルのように隙間なく綺麗に詰める。もちろんおやつは入るだけ詰めた。 「1週間後だと食べられなくなってるよね」  入らなかった分は夜食になった。  そして夜更けに旅支度を終えるが、部屋の散らかりようを見て掃除を始めた。掃除をしながら、いろいろと発見して遊んでしまう。 「これ、持ってった方がいいかも」 と思う物が出てくることもあり、綺麗に詰めたカバンに入れ直す。  いつまで経っても終わらない。  それが彼女の冒険前日。
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