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未来に捕らわれになる姫
彼女は何日か後に魔王に連れ去られ、王に頼まれた勇者のタマゴたちご一行に助けられる。
でも、まだその時ではない。
姫は豪華な城の豪華な部屋の天蓋付きのベッドですやすや眠っている。
「いつか、勇者様に助けられるの」
そんな夢を見ながら。
「きっと、地位はないけどそこそこ裕福な冒険家の息子。そこそこ人望もあるから仲間にも恵まれている。筋肉モリモリの戦士……、これは好みではないわね。インテリ世話焼き僧侶……かっこつけすぎよ。自由奔放な魔法使い。おとなしくしていれば美人なのにね。私の方がかわいいわ」
目を閉じて姫は言う。
「村はずれの約束の場所に一番にいたのは時間に厳しい僧侶ではなく、酒場から直接来て眠っていた戦士」
姫は夢で未来を視る。
「3番目に来たのは一睡もできなかった魔法使い。ギリギリだったけど走る元気もないから歩いてる」
彼女は昇ってくる太陽を背に現れる。
「目が覚めたらすでに陽が上り、約束の時間はとっくに過ぎていて、慌てて家を飛び出す勇者のタマゴ」
でも、それは少し未来の話。
まだ夜のとばりが下りている。
「いつか、私も……」
うつろな目を開け、姫はそうつぶやいた。
でも、彼女はそれを誰にも言わない。
夢うつつで朝になるとはっきりとは覚えていないし、もしも覚えていて誰かに言ったとしても信じてもらえない。
「彼らの冒険は明日から」
そう言うと、再び眠りに落ちる。
いつか夢が現実になったとしても、
現実は忙しくてそれを思い出しているヒマはない。
姫は微笑して夢をみていた。
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