2 もう会えない

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 いつものように副島が灰皿の横に手持ち無沙汰そうに立っていた。 「なんでいるんだよ」  いつも副島が俺にいう言葉をつぶやく。それだけ聞かれたら不満みたいだ。  少しだけ足が早まった。  煙草、やめなかったのかな。それともそうしようと言っただけで、それほど本気じゃなかったとか。ただの予定を言っただけだったとか。可能性を無駄にたくさん考える。  だけど、やばい、嬉しい。にやけそうになる。副島がいるというだけで。会えるだけで。  俺を見つけると、副島はいつもの言葉を言わず、軽く手をあげた。  俺は目配せしてコンビニの中に入り、ホットミルクティーを選んだ。こんなときに限ってレジは二人も並んでいる。動いているのは1台だけだ。あわてずなにくわぬ表情をしていたい。でも早く早くと自分が急かす。  ようやく会計が済み、店を出てゆっくりと灰皿のあるほうへ行った。 「買い物?」  当たり前のことを副島は聞いた。 「そ」  横に並ぶ。 「煙草、やめてないんだ?」  言わないでおこうと思ったけど、口から出てしまった。 「……ああ。まあ」  どっちなのかわからない返事をする。俺は副島の隣に並んだ。 「卒論、進んでる?」 「それなりには」  副島はなんでもソツなくこなせる。恋愛は不器用なのに頭はいい。実際の進行具合がどうなのかはわからないけど、苦心しているようには見えなかった。  ミルクティに口をつけるのを、副島がちらと見た。 「ミサカ、そういうの好きだったっけ」 「うん。寒くなるとね」 「俺、ミサカのことなにも知らないんだな」  俺はミルクティを飲む手を止めた。いきなりなにを言い出すんだ、と思った。 「……そうだね」  ポケットに手を入れて副島が前を見ている。 「俺たち会ったのいつだっけ」 「はじめて話したのは、一昨年かな」 「そうだよな」 「そうだね」  副島がなにを考えているのかよくわからない。いままで俺そのものに興味を持っているようには見えなかった。悲しいことに。それは仕方がないけれど、こんな、いままでを振り返るようなことを言うのを聞くのもはじめてだった。
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