1 午後3時、いつもの場所で

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 俺が尋ねると、副島は何か言おうとして口を開きかけ、やめた。 「寒いな」 「寒いね」 「そろそろ行くかな」 「俺も」  副島がこっちを振り返った。俺と目が合うと、少し間が空いてから背を向けた。  副島は、何か言いたかったんだ。  そう思ったけど、聞かなかった。  コンビニの中のゴミ箱に紙パックを捨てた。  店の外に出たときにはもう副島の姿はなかった。  俺はパーカーに手を突っ込んでコンビニを後にした。  今日の逢瀬も終わってしまった。あと何回、副島に会えるだろう。  すじ雲が形を変えていた。風に流されて、自在に。  あんな風に、俺の気持ちも消えてしまったらいいのに。  夕飯、なんにしよう。なんかあったかいものが食べたい。  副島に会えたらいい日なはずだったのに、俺の心はちょっとだけ暖かさが欲しい。
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