変わる

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変わる

 可愛い服が着たい。女の子っていいなと思い始めたのはいつだっけ? 幼い頃はスカートはいてもワンピース着ても、母さんも笑ってくれていた。父さんなんか美人だぞなんて言ってくれて。  それが変だと母さんが言い出したのは小学校に上がった頃だったかな? 「男の子なんだから!」  よくそう言う風に言われた。違和感があったのは自分にじゃない。母さんにだ。生きたいように生きるのがなぜ悪いのか。母さんに反抗するように僕だった一人称を私に変えた。髪も伸ばした。スカートもワンピースも身に着けた。ただ可愛くありたかった。  私を見る大人たちは可愛い女の子だねなんて言ってくれたけど、私が男の子だと知ると困ったような顔をした。私はおかしくなんかない。奥歯を噛み締めて、その大人たちを睨んできた。母さんは私を叱りつけたけど、父さんが横にいるとこう言った。 「うちの子、美人でしょ?」  父さんは苦手だ。大好きだけど苦手だ。飄々としているものだから考えていることが分からない。そのくせ私の一番の理解者だ。  親族の結婚式にドレスで行きたいと我がままを言ったら、ドレスを買いに連れに行くし、リボンが欲しいと言ったら当たり前にプレゼントをしてくれる。  そんな父さんを母さんはどう思っていたのだろう? 流されてしまったのだろうか? 私が女の子の格好をしているだけのうちは嫌な顔をしながらも許してくれていた。  その母さんが私をおかしいとはっきり言葉にしたのは中学生に上がった頃だった。  多分それは初恋というやつだ。私の初恋の相手は男の子だった。私を可愛いと言ってくれたから、好きだと言ってくれたから、どんな私でも好きだと言ってくれたから。  迂闊だったのかも知れない。学校でも女の子の格好をしていたから大丈夫だと思ってた。ただの男女のカップルに思われているはずだった。  下校途中にキスをする私たちを母さんが見つけるまで。
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