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プロローグ
とある都内近郊に、隣接する男子校と女子校があった
武蔵野尾花高等学校はそこそこおバカな男子校
武蔵野清白女子高等学園はまあまあおバカな女子校だった
この2つの学校はともに創立100年以上を越える
そんな両校が、ジェンダーレスの煽りを受けて、合併して共学になるという話が持ち上がったのがちょうど20年前
しかし、いまだに話は進んでいない
※※※
「先日、うちの生徒が痴漢に遭っているところを、そちらの男子生徒に助けていただいたみたいで、一応礼を言っておきますわ。あ、あなたにではなくて、その男子生徒によ?お伝えくださる?」
「その件では、女子生徒の保護者から直接お礼の手紙が届いておりますので、理事長自ら言っていただくほどのことではございませんよ。お忙しい身でしょうし。そんな鬼みたいな顔で言われても嬉しくもなんともねーよ」
「あ?」
前者、清白学園の理事長、清白春子、45歳
後者、尾花高校の理事長、尾花秋広、46歳
2人は高校合併のために政略結婚したものの、あまりのウマの合わなさに3年で離婚した元夫婦同志である
以来、合併どころか、理事長同士の関係を表すかのように、両校の関係は冷え切っていた
「私たちの時代は文化祭や体育祭は共同でやったりして、ともに地域振興に貢献していたのに、世知辛い世の中になったものだねえ」
「本当に。でも仕方ないですわ。私たち2人ともこの子たちには頭が上がりませんもの」
前者、武蔵野清白女子高等学園元理事長、清白春継、75歳
後者、武蔵野尾花高等学校元理事長、尾花秋菜、72歳
この二人は幼馴染同士で、長いこと両片思いであったが、共に親が決めた許嫁と結婚して、理事長を継いだ
数年前に、相次いで伴侶を亡くし、いまはよい茶飲み友達である
都内の私立高校協会の理事長会で顔を付き合わせた4人の関係性は以上の通りである
春子と秋広がそれぞれの親をにらんだ
「それでは本日私はパネリストなのでお先に失礼」
春子が冷たく言い放つと、秋広が
「来月は私ですよ。持ち回りなのにそんなドヤ顔されてもね」
春子はもう一度秋広を睨み付けると、ドスドスとステージに向かった
「それじゃあ我々も行こうか」
春継が出した肘に、秋菜が手を添えた
「ええ。それじゃあ秋広、後でね」
「秋広くん、またね」
協会の理事の二人は、席が用意されている壇上に向かった
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