ふしぎな手紙

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「……えっ」  どう見ても、「ここにいますよ」と、書いてある。誰だかの「今どこにいますか」の、となりに並んで。  怖くなったので、すぐにゴミ箱に捨てた。  ……でも。何だか、捨てるのも怖い。得体が知れなさすぎる。  そう思い直し、再びゴミ箱から拾い上げ、胸ポケットに戻した。明日、同じ放送委員のけんけんにでも聞いてみよう。心当たりがないかどうか。  しかしふしぎなことに、次の日にはその手紙は、胸ポケットから消えていたのである。  さらに一週間後のことだ。  また手紙が胸ポケットに入っていたのである。  しかも前にもらったのとは違う、別の手紙だ。下校時間の放送を終え、その日に流した曲のタイトルを生徒手帳にメモしようとしたら、一緒に手紙が、出てきたのである。 「うおっ」  と、思わず声が出てしまった。 「楓。どうした?」  けんけんが寄ってくる。 「……あ、いや」  けんけんは友だちではあるが、なぜか言えなかった。帰宅してから紙を取り出して、こっそりと見る。  お元気ですか  と、書かれてあった。  私はしばらく、その端正な文字列を、ためつすがめつ眺めてみた。
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