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「どうすれば、じゃないわよ」
「……へ?」
「何してるのよ、あなたたち」
頭上から突然聞き慣れた声がして、六花は心臓が飛び出るほどに驚いた。見上げればカウンターの上で秋穂が呆れた表情を浮かべている。
「三人とも立ちなさい!」
秋穂の大声でおもわず跳び上がる三人。
「ひとのバッグは勝手に漁っていいんですか、悟くん」
「いけません」
「茂くんは?」
「だめだと思います」
「ひとに隠れてこそこそとするのはどうなんですか、六花さん」
「よくないと思います」
「……まったく、なにしてんのよ」
大きな溜め息とともに、手を差し出してくる秋穂。「返しなさい」というジェスチャーだ。
「でも、これは返すわけにはいかないわ」
「はあ?」
「それにこそこそしてるのどっちよ! 見損なったわ秋穂、あなたが悪の組織に関与しているだなんて」
「え、なんの話?」
「最低よ!」
「いやいや」
「ねえ秋穂、警察にいこう。あたしも一緒に行くから」
「……あのさ。それ、おもちゃなんだけど」
──時が、止まった。
目をまんまるにして、まるでカチンコチンの氷のようにかたまる三人。六花の頭の中では「おもちゃ、おもちゃ……」と何回も同じ言葉がくり返された。
え、どういうこと?
おもちゃ? なにそれ。
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