1/1
50人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

「どうすれば、じゃないわよ」 「……へ?」 「何してるのよ、あなたたち」  頭上から突然聞き慣れた声がして、六花(りか)は心臓が飛び出るほどに驚いた。見上げればカウンターの上で秋穂が呆れた表情を浮かべている。 「三人とも立ちなさい!」  秋穂の大声でおもわず跳び上がる三人。 「ひとのバッグは勝手に漁っていいんですか、悟くん」 「いけません」 「茂くんは?」 「だめだと思います」 「ひとに隠れてこそこそとするのはどうなんですか、六花さん」 「よくないと思います」 「……まったく、なにしてんのよ」  大きな溜め息とともに、手を差し出してくる秋穂。「返しなさい」というジェスチャーだ。 「でも、これは返すわけにはいかないわ」 「はあ?」 「それにこそこそしてるのどっちよ! 見損なったわ秋穂、あなたが悪の組織に関与しているだなんて」 「え、なんの話?」 「最低よ!」 「いやいや」 「ねえ秋穂、警察にいこう。あたしも一緒に行くから」 「……あのさ。それ、おもちゃなんだけど」  ──時が、止まった。  目をまんまるにして、まるでカチンコチンの氷のようにかたまる三人。六花の頭の中では「おもちゃ、おもちゃ……」と何回も同じ言葉がくり返された。  え、どういうこと?  おもちゃ? なにそれ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!