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 悟たちのクラス担任、宮嶋秋穂のことは六花(りか)もよく知っていた。彼女は六花堂(ろっかどう)の常連であり、プライベートでも仲の良い友人である。竹を割ったように明るく元気な性格で、六花が大好きな人間のうちのひとりだった。 「秋穂の前夜がどんなのだったのよ」 「それが……」  クラスで生き物係を担当している茂は昨日の放課後、メダカの水槽を掃除していた。一生懸命に水槽を磨いていると秋穂がやってきて「ありがとね」の言葉とともに頭を撫でてくれたのだという。  そのとき、図らずもが発動した。 「六花堂の看板、10月25日、そして……」 「そして?」 「バッグの中に拳銃」 「え?!」 「拳銃だよ、拳銃!」 「なんでそんなもの」 「知らないよ、俺だって初めて見た」 「秋穂がそんなもの持ってるはずがないわ」  秋穂は小学校の先生だ。そんな危ないものを持っているはずがない。それに10月25日といったら今日じゃないか。  ──もしや明日、その拳銃で事件が起きる?  いやいや、そもそもこんな話を信じるほうがどうかしている。おもわず夢中で聞き入ってしまったがここは大人の女性としてしっかりしなくてはならない。 「さて、お話はおしまい。結構楽しかったわ」 「六花さん、信じてないの?」 「あのね、あたしは暇じゃないのよ」 「六花堂の光景も映ってる。六花さんの身にも危険が迫ってるかもしれない!」 「あら、それならあたしの前夜でも見てみれば?」  軽はずみに出た言葉だったが、六花は口にした瞬間「しまった」と思った。悟がすでに目をきらきらと輝かせて反応している。 「それだよ、六花さん!」 「……やるしかないか」 「え、ちょっと待ってよ。やるってなによ」 「だよ」 「いやよ!」 「六花さん、俺を信じて手のひらを前に出してほしい」
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