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「行こう」
それだけ言うと、智成は美桜の手を取った。
「そうね、ここにいても何も始まらないし」
美桜は智成の横に並んだ。智成は数歩進むと一旦足を止め、後ろを振り返る。
「あんたたちはどうすんだ」
智成の視線の先にいたのは、最後までそこを動こうとしない最後の一組の夫婦だった。
「わ、私達は残るよ。私達夫婦には殺人なんてとても」
「貴方達が全員を殺してくれたら解放されるんでしょ。私達は人の命を奪ってまで賞金が欲しいなんて思わないです。だから、ここで終わるのを待ちます」
「そうですか」
それだけ言うと、智成は再び歩を進めた。哀し気な表情を相手夫婦に向けたままの美桜の手を少し強引に引っ張りながら。
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