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開幕
背後の扉が開き、同時にブザー音が鳴り響いた。始まりの合図だ。扉の先にはテーブルがあり、その上に十本のナイフが置かれていた。これを各組が一本ずつ手に取り、ターゲットの命を奪えという事だ。
奇声を上げながら勢いよく飛び出していったのは、説明の途中でガッツポーズをしていた夫婦だ。やる気満々なのだろう。残りの九組は扉の先へ向かう事を逡巡していた。もちろん、智成・美桜夫妻も同様だった。
「皆様、どうしました?早くしないとこのゲームは終わりませんよ」
マイクを傍らに置き、そう言い放った男の声は、地声でも周りを圧倒する迫力のある声だった。
「そんな事‥‥‥」
美桜が何かを言いかけた時、全員のタブレットからメロディーが流れだした。その音に皆がビクッとした後、一斉にそれを覗き込む。
メロディーはすぐに止み、続いてメッセージが流れた。
『鬼頭村雨・環夫妻、ターゲットナンバー3へのけーき入刀が完了しました』
続けて最初の画面に戻り、三番目のターゲットの顔に赤いバツが被せられた。勢いよく飛び出していったあの夫妻が、早速一人目のターゲットの命を奪ったのだ。
これを見て、残りの九組の夫妻も改めて実感した。
ゲームは始まっているのだと。
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