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しばしの静寂の後、誰かが口を開いた。
「ねえ、こいつって‥‥‥」
「え?あ、こ、こいつは」
タブレットに顔を近づけて、その夫婦はターゲットの顔をまじまじと見た。
「連続児童殺害犯じゃないか!ニュースでこいつの顔を見る度、殺意が湧いたよ。こいつ、刑の執行まだだったのか」
「あなた、許せないって言ってたわよね。法で裁けないのなら俺が殺してやるって、言ってたよね」
その夫婦は、決意したかのようにお互いに頷き、そしてゆっくりと扉の向こうへと歩みを進めた。
その言葉が合図になったかのように、皆がタブレットに視線を注いだ。ターゲットの顔を改めて見ると、ニュースで大々的に取り上げられた知った顔ばかりだった。
やがて、独り言のように皆が口にし始めた。
「この野郎、当時から許せなかった」
「これ、私も殺してやりたいと思ったことある奴だ」
「当時、一発ぶん殴らねえと気が済まんと思ってたんだよな」
ここにいる誰もが、被害を受けたわけではない。だが、それでも犯罪者に対する憎しみは、人それぞれ抱いているものだ。
一組、また一組と、意を決したように会場内へと向かっていき、残ったのは智成・美桜夫妻ともう一組のみとなった。
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