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#001
真っ黒な宇宙の奥に見える青く美しい水の惑星――地球。
その周りに点在するムーグツーと呼ばれるスペースコロニーの側には、何隻もの宇宙戦艦――スペースバトルシップが並んでいる。
それは、これから始まる連合国軍の観艦式のためにそろえられたものだった。
自分たちの力を誇示するかのように威圧感を放つバトルシップの群れを見て、一人の男が鼻を鳴らす。
「わざわざすべてのレインボー級をそろえたか。くだらんなことをする……」
そう呟いた男は自身のオールバックの髪を右手で流すと、次に首に巻いているスカーフの位置を直し始めた。
彼の口にしたレインボー級とは――。
全長二百二十八メートル、全幅六十二.二メートル、総重量三十トン。
レーザービーム砲六門、連装機銃六基、六連装ミサイルランチャーに門、艦首大型ミサイル八門が取り付けられた連合国軍のスペースバトルシップのことだ。
すべてのバトルシップが武装し、まるでこれから戦争でもするのかという大艦隊。
男はスカーフの位置を直しながら、実にナンセンスだと無表情で口にしている。
そして、男は続けて呟く。
「地球の次は宇宙か……。人の浅ましさも、ついにここまで来たのだな……」
連合国はこれまでの戦乱の日々を安定させ、地球の問題に取り掛かっていた。
人口の増加や、それに伴う食糧不足などの問題だ。
その解決案の一つとして考えられたのは、宇宙にスペースコロニーを造り、食料や薬品を作るということだった。
地球上が連合国軍の活躍によってあくまで表向きは安定していたのもあって、スペースコロニーの開発に尽力。
いくつもの失敗を重ねながらも、ついにムーグワン、ムーグツー、ムーグスリーと名付けられた三つのコロニーが造られた。
今日はその中の一つである居住区域を目的としたムーグツーにて、先の大艦隊を集めた観艦式が行われる。
全人類へのアピールでもあるのだろう。
その宇宙に浮かぶ艦隊やスペースコロニーは、たしかに壮大で人間の科学技術の発展を誇らしく掲げているようだった。
だが、男は微笑まない。
スカーフの位置を直した彼は、目の前の通信機器に向かって言う。
「我がストリング帝国の兵士たちよ。これから我々の……。人類のための戦いを始める……」
男の名はノピア·ラッシク。
現在はストリング王国となったかつてのストリング帝国の将軍だ。
今から約六年前――。
共和国制を布いていたバイオニクス共和国での人工知能との戦闘で、その消息を絶った彼だったが。
ついに表舞台へと姿を現す。
世界の――連合国の敵として。
ノピア·ラッシクは言葉を続ける。
「まずは挨拶代わりだ。連合国軍自慢の大艦隊を全滅させろ」
ノピアの言葉を聞き、彼の目の前にあった通信機器からは、兵たちの鬨の声が聞こえてきていた。
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