#014

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#014

――マシーナリーウイルス。 ストリング帝国の科学者たちが開発した、人体を侵食する細菌。 このウイルスは、体内で一定の濃度まで上がると成長し、宿主の身体を機械化する。 機械化した者は人体を超えた力と速度で動けるようになるが、宿主は自我を失い、ストリング帝国の完全なる機械人形へと変わってしまう。 かつての帝国はこのウイルスを自国の軍に注入させており、先に述べた機械人形――オートマタと呼ばれる機械兵を生み出した。 だが、その中でもウイルスに適合できる者がいた。 それが、今から十三年前に現れた暴走コンピューターを止めた英雄アン·テネシーグレッチと、その妹であるローズ·テネシーグレッチだ。 ローズはすでに前の戦争で亡くなっており、現在世界ではウイルスに完全に適合できるのはアンだけだと言われている。 その中でも、帝国の将軍――ノピア·ラシックのように暗示や投薬施術による人為的な精神操作、記憶操作、あらゆる内科的、外科的手術により強制的にウイルスを適合する者いる。 そういう者は強制者と呼ばれ、十三年前に以降に現れたウイルスに適合できた者の多くが、こちらに分類される。 ブレシングの目の前にいる男――。 リョウガ·ワスプホーネットがどちらに分類されるかはわからないが。 おそらく彼は適合者ではなく、強制者だと思われる。 「ワッハハハッ! いい反応、いい反応だぜ中尉殿ッ!」 驚愕するブレシングに高笑ったリョウガは、さらに彼を驚かせてやると言い、両目を瞑って何やら念じ始めた。 すると、彼が背負っていたジェットパックから円形のユニットが飛び出す。 その大きさは回転ノコギリの刃ほどのサイズで、まるでリョウガの思念に反応して動いているように見える。 そして二体の円形ユニットは凄まじい回転をして、まるでピックアップブレードのような光の刃を纏い始めた。 「なんだそいつはッ!?」 リョウガの背中から現れたユニットは、今にもブレシングを切り裂こうと(うごめ)ていた。 それを見て、声を張り上げて身構えるブレシングに、リョウガは嬉しそうに答える。 「こいつはストリング帝国が新たに開発した新兵器、RELAY-Gだッ!」 RELAY-Gとは――。 ジェットパックに付けた円形のユニットを、マシーナリーウイルスの能力であるPersonal link(パーソナルリンク)通称P-LINKで操作する兵器。 マシーナリーウイルスの適合者や、特殊な人間同士の意思の疎通を可能(かのう)にする力であるP-Linkの脳波で回転させながら飛ばす――マシーナリーウイルスの適合者や強制者専用に造られたものだ。 要は、無線式のオールレンジ攻撃用兵器と呼べる代物である。 帝国がマシーナリーウイルスの能力者専用の兵器を開発したいう事実に、ブレシングは激しく動揺する。 「こんなものを……。こんなものがあったら、適合者がますます戦争の道具なってしまうじゃないかッ!」 「そうだなぁ。お前の言う通り、ウイルスの保有者は道具になるのかもなぁ。でも子供っぽく言わせてもらうと、道具っていうよりは、いわゆる選ばれし者ってヤツのほうがしっくり来ると思わねぇかッ!?」 声を張り上げて怒りを(あら)わにするブレシングに対し、リョウガも声を張り上げ返してピックアップブレードを構えた。
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