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#016
――ムーグツーの港から出たメディスンは、自らの部隊ファルコンヘッドの兵たちに指示を出し、次々に連合国軍艦隊を墜としていくストリング帝国の攻撃からスペースコロニーを守備していた。
だが、すでに大艦隊を指揮していたイーストウッドの艦は沈み、状況が好転する気配すら見えない。
さらに数名ではあったが、ムーグツー内に侵入者すら許してしまう。
「くッ!? イーストウッドが殺られたか……」
連合国軍の中将で特殊部隊ベクトルの指揮するリプリント・イーストウッド。
メディスンにとって彼は、味方でいながら敵のような存在でもあった。
実際にイーストウッドのせいで何度も命を落としかけたこともある。
だが、それでもイーストウッドはメディスンに対して敬意を持っていた。
これまでも何度も連合国の上層部に噛みついてきたメディスンが、連合国軍の大佐という地位にいられるのは、イーストウッドが彼の実力と人柄を評価していたからだ。
そんな複雑な想いを持つ相手が戦死したことは、メディスンの心を乱す。
しかし、それでも彼は冷静さを保った。
たった一隻のバトルシップで、ムーグツーにこれ以上侵入者が入れないように戦っている。
暗闇の至るところから閃光が飛び、味方部隊ベクトルのバトルシップが火に包まれていく中。
メディスンは見事な指揮で、ムーグツーに帝国兵を寄せ付けなかった。
だが、突然彼の乗るバトルシップに一人の男が飛び込んできた。
艦橋――ブリッジの目の前に立つ男は、右手に宇宙空間を照らす光剣――赤い刃を持つピックアップブレードを握って立つ。
メディスンはそれが誰かすぐに気が付いた。
深い青色の服――ストリング帝国の軍服に身を包み、その首にはスカーフを。
さらに撫でつけたオールバック――見間違えるはずがない。
「ノピアッ!? ノピア·ラシックッ!?」
驚愕するメディスンの表情を見て、ノピアは指に付けていたリングタイプの通信機器へその口を近づけた。
すると、メディスンの乗るバトルシップに彼の声が聞こえてくる。
《この劣勢でここまで踏ん張るとは、さすがはメディスン。私が認める数少ない連合国軍の人間だ》
「ノピアッ! 君は今までどこへ行っていたんだッ!? いや、それよりもこれは一体何の真似だッ!」
《イーストウッドの奴には冥土の土産に話してやったばかりだが、まあいい。友人として、君には説明しておきたいと思っていた》
それからノピアの口からは、連合国の批判が吐き出された。
一見して世界は平和になっているように見えるが。
その裏では貧困層が続出し、さらにそのことで一部の権力を持つ人間のみが潤うシステムができている。
そのことに気が付いているのは、連合国軍に虐げられている者たちだけだと、ノピアはメディスンから目を離さずに伝えた。
《君ならわかっているだろう。もう連合国には世界を任せられないと》
ノピアの言葉を聞いたメディスンは、驚愕の表情から一変して激しく彼を睨みつけた。
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