#021

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エヌエーはこのまま地面に激突すると思われたが。 落ちていく彼女に気が付いていたニコが動いており、なんとか地面ギリギリでその身体を受け止める。 だがニコの小さな身体ではエヌエーを支えきれず、そのまま叩きつけられてしまう。 「ニコッ!? くそッ!?」 ブレシングが急いで地面に着陸してエヌエーとニコに駆け寄った。 その傍には、先ほど空から見た明るい緑色の髪をした少女――ミント·エンチャンテッドが倒れているエヌエーとニコに寄り添っている。 ブレシングはミントを見るなり、声を張り上げる。 「民間人がこんなところで何をしているんだッ! 君がこんなところにいたからエヌエーさんはッ!?」 「今は私のことよりもこの人の手当てを」 「わかってるよ! そんなことッ!」 ブレシングは倒れているニコが身に付けていたウエストバッグから、治療キットを取り出す。 ニコは呻きながらもなんとか動いている。 エヌエーのほうも意識こそ失っているが、命に別条はなさそうだ。 かといって安心できる状況ではない。 空には敵――しかもマシーナリーウイルスの保有者。 そのうえ、民間人であるミントもいる。 ブレシングとしては、彼女とエヌエー、ニコを連れて一刻も早くこの場を去りたいところだが――。 「噂通り、自分よりも他人を優先するんだな。エヌエー·オーガニック……ますます気に入った!」 すでに自分たちの頭上に移動していたリョウガは、歓喜の声をあげながらブレシングたちのことを見下ろしている。 これは不味い。 どうする、どうすればいい? 思考を巡らせたブレシングは、ミントへ声をかける。 「……君に頼みがある」 「頼み……ですか?」 エヌエーに寄り添っているミントは、小首を傾げている。 ブレシングはこの状況で狼狽えていない彼女を見て違和感を覚えたが、言葉を続ける。 「無茶なことを言うけど、エヌエーさんとニコを連れて逃げてくれ」 本当ならば自分が少女とエヌエー、ニコを抱えて逃げればいいのだが。 目の前にいる帝国准尉がそれを許してくれるとは思えない。 なら自分が食い止めている間に、少女にエヌエーたちを連れて逃げてもらうしかない。 ブレシングは、自分でもかなりの無理を言っているのはわかっていたが、今はその方法以外に選択肢がないと判断した。 だがそんな彼の指示に、明るい緑色の髪をした少女は従わなかった。 彼女は屈んでいた状態から立ち上がると、ブレシングに言う。 「お断りします」 「ハァッ!? なんでだよッ!?」 驚愕するブレシングを無視したミントは、上空にいるリョウガに向かって声をかける。 「ストリング帝国の方をお見受けします。私はミント·エンチャンテッド。どうか私のことを、あなたたちの主のもとへ連れて行ってください」
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