7人が本棚に入れています
本棚に追加
#004
街中で行われている軍事パレードはさらに盛り上がっていき、ブリキの玩具のような兵隊と楽団が行進を始めている。
可愛らしい兵隊と楽団。
その行進に合わせて音楽が流れ出す。
エヌエーが買ってくれた各国の屋台の料理を食べながら、子供たちは両目を見開いてその光景を楽しんでいた。
その様子を見て、アンはため息をつきながらもその無表情が崩れていた。
「まあ、滞在中はいいか……」
「そうそう、せっかくのお祭りなんだから」
はしゃぐ子供たちを眺めながら、並んで笑みを交わし合うアンとエヌエー。
こうやって仕事を休んで顔を合わすのも久しぶりとあって、先ほどこそ揉めていたが、二人も子供たちに負けず劣らず嬉しそうにしている。
「メディスンの奴もここにいるんだろう?」
「うん、ワタシはついさっきここに着いたけど。メディスンは仕事で来ているからね」
メディスンとは――。
アンとエヌエーの友人で、これから行われる連合国軍の観艦式の護衛の任務についている男だ。
ちなみメディスンの階級は連合国軍の大佐。
エヌエーは彼と同じ佐官――中佐であり、アンは尉官――大尉である。
このスペースコロニーを囲っている何隻もの宇宙戦艦レインボー艦隊は彼の指揮する部隊ではなく、連合国軍の中将リプリント・イーストウッドの指揮するベクトルという部隊だが。
メディスンもイーストウッドに徴集され、観艦式に参加しているようだ。
「じゃあ、仕事が終わった後で会えるな」
「そうだね。あッ、ワタシもそろそろ行かなきゃ!」
「おい、どこへ行くんだエヌエー?」
「ワタシにも仕事があるんだよ! 後で合流しましょう。終わり次第すぐ連絡するから」
手にしていた料理をアンに手渡し、慌ててその場を去って行くエヌエー。
どうやら彼女もまたメディスンと同じく、これから始まる観艦式で仕事があるようだ。
パレードを楽しむ人混みを抜けて行くエヌエー。
はしゃぐ子供たちと残されたアンは、彼女の背中を眺めながら呟く。
「迷惑をかけてしまったな。あとで謝らなきゃ……」
アンが仕事中だったエヌエーに申し訳ないと思っていると、子供たちが彼女の服の袖を引っ張って来る。
「ほら、アン姉ちゃんも一緒に見よう」
「スゴイよ! 兵隊や楽団が音楽に合わせてクルクル踊ってるよ!」
子供たちは先ほど喚いていたとは思えない喜びっぷりで、アンは思わず呆れたが。
彼女はすぐに笑みを取り戻す。
「やれやれ、お前たちは本当にゲンキンだなぁ」
「いいからいいから」
「お姉ちゃん! 早くこっち来てよ!」
そして子供たちと一緒に、アンもまたパレードを楽しむのであった。
最初のコメントを投稿しよう!