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ノックの音と同時に女性が入ってきて、机に飲み物を置いてくれた。
そしてシルバに「これは特別」とこっそりお菓子を手渡して出て行った。
満面の笑顔のシルバは「ありがとう!」とちゃんとお礼を言っていた。
(うん、よしよし。偉いぞ、シルバ。)
心の声が漏れていたのか、課長が俺を見て
「葛西…すっかりママだなぁ…」
と揶揄うように呟いた。
それをスルーして
「当たり前じゃないですか。俺ママですから。
で?何からお話しすれば?」
と切り返すと、また
「母親は強し…須崎さん、覚悟しといた方がいいよ…」
と今度は黒曜さんを揶揄い始めた。
怒っちゃダメだ。平常心、平常心…
呪文のように呟いて心を落ち着かせる。
俺の怒りの視線に気付いたのか、急に真顔になった中澤課長は
「さーて、先に銀波ちゃんの話を聞こうか。
で、終わったら隣の部屋でさっきのお姉さんと待っててもらって、その間にパパとママの話を聞かせてもらう。
銀波ちゃん、いいかな?」
「はいっ!」
「よーし、いい子だ。
辛くなったら話さなくてもいいから。
嫌な時は、お手々でバツしてくれるかな?」
「はい。」
「オッケー。
じゃあ、事故の時のことから聞こうか。」
……………………………
シルバは、時々泣きそうになりながら、それでも、バツ印のサインを出すこともなく、事故直後から救出されるまでの出来事を事細かに話して聞かせた。
そして最後に
「僕を捕まえたおじさん、『ごめんね』って泣いてた。
本当に悪い人じゃないと思う。
助けてあげて。」
と言った。
俺は思わず
「何言ってんの?シルバを誘拐した奴だよ!?
同情なんかしなくていいから!」
と叫んでいた。
シルバは首を横に振りながら
「『コイツにも家族がいるんだ』って泣いてた!
あのおじさんにも家族がいるよ!?
だから…だから、家族の所に帰してあげて!」
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