ぬくもり

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「シルバ…シルバ……大丈夫?」 優しいママの呼び掛けに、はっとしてママの顔を見た。 「何か思い出しちゃった?そうだよね、怖かったよね。 でも、もう大丈夫。俺も黒曜さんも、この子もシルバの側にいるから。」 大丈夫、大丈夫…と俺の頬の涙を拭いながら、ぎゅっと抱きしめてくれた。 うん…怖かったよ、ママ。 『あの人』…僕の“お父さん”だったのかな? 僕だけ別にして、どこへ連れて行こうとしてたんだろう。 きっと、僕を…殺そうとしてたんだ。 あの目は…多分忘れることはないだろう。 僕を誘拐したおじさん、『悪いことした』って泣いてたよ。 ちょっぴりかわいそうだった… 「ねぇ、シルバ。」 ママが大きな目を瞬かせて言った。 「何度も言うけど、シルバの家族は俺達だからね。 黒曜さんはパパ。 俺はママ。 この子はシルバの弟か妹。 ね?」 ママはすごいな。 何にも言わなくても、僕の気持ちが分かるのかな。 「ママ…」 きゅっと抱きつくと、優しい匂いがした。 そしてママのお腹をそっと撫でた。 赤ちゃん、ごめんね。 今は、ママを独り占めさせて。 弟か妹か分かんないけど、君が生まれたらママを返すから、絶対に返すから。 それまではママを僕のママにさせて。 お願い… 「シールーバぁ…」 ママの呆れたような声がした。 僕の頭を撫でながら 「あのね、この子が生まれる前も生まれてからも、俺はずっとシルバのママなんだから! 何度も何度も言うけど…俺は、ちゃんとシルバのママなんだよ。」 ふえっ…うわーーーーーん!!! ママは魔法使いみたいだ。 心がじんわりと温かくなっていく。 俺を優しく撫でながら、ママは 「子供は子供らしく甘えればいいんだよ。」 って笑ってた。 僕はママに縋り付いて大泣きしながら、ママが僕を守ってくれたように、この優しくて強くて温かなぬくもりを絶対に守るんだと決心していた。
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