762人が本棚に入れています
本棚に追加
収束
兄さんの家でゆっくりさせてもらった(いや、惚気られて当てられた、と言った方が正解だ)後、俺達は やっと自分の家に帰ってきた。
ところが、のんびり過ごそうと思っていたのに警察から電話があり『体調が落ち着いたなら一応事情聴取を』と言われ、午後から出向くことになった。
シルバが思い出して、それが新たなトラウマになったりしないか俺はヤキモキしていたが、当の本人は
「ママ、僕大丈夫だから。」
と、あっさり引き受けてしまっていた。
一体シルバに何があったんだろう。
何だか少し、大人になったような気がする。
不思議な感覚を覚えながら、タクシーを呼び、3人で警察署へと向かった。
出迎えてくれたのは中澤課長だった。
「こんな慣れない場所だし、顔見知りの方が言いやすいこともあるでしょ?
花巻がいいかな、って思ったんだけど、アイツも同じ事件に関わる被害者だからね。ちょっと遠慮して…だから、俺が担当!
銀波ちゃん、俺でいいかな?」
「はい!」
「おおっ、いい返事だ。
じゃあ、早速…こちらの部屋へどうぞ。」
サラリと流されそうになったが、課長に噛み付いた。
「花巻も被害者ってどういうことですか!?」
「あぁ…うーん…実は別件で森田もストーカー被害に遭っててな。
今回のことでもう解決したからいいんだけど。」
「…そんな大変な目に遭ってたのに、俺達のことばかり心配して……」
普段と変わらない様子の花巻達の笑顔を思い出して泣きそうになった。
そんな俺を黒曜さんとシルバが抱きしめてくれ、やっと平静を取り戻したのだった。
ドラマで見るような机と椅子しかないあんな部屋ではなく、ゆったりと寛げるようなソファーが置いてある、日当たりの良い部屋へ案内された。
「…課長…ここは?」
「あ、俺の部屋。…まさか取調室に連れて行かれるとでも?
被疑者じゃないんだし、まして銀波ちゃんも一緒だよ!?
そんな扱いは俺はしないよー!」
あははっ と豪快に笑う課長にホッとして緊張が解けた。
最初のコメントを投稿しよう!