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シルバのその言葉に俺達は呆然として固まった。
俺達を見つめるその真っ直ぐな瞳が、見る間に涙で滲んでくる。
俺はシルバをぎゅうっと抱きしめた。
あぁ、この子は…
想像もできないくらい、自分が途轍もなく怖くて辛い思いをしたはずなのに、自分を攫った犯人のことを心配するなんて…
純粋な心に愛おしさが募り泣きそうになった。
「…ママぁ…大丈夫?」
シルバは俺の背中を撫でてくれていた。
こんな時に俺の心配もしてくれるの?
ありがとう、優しいシルバ。
俺はシルバのおでこにそっとキスすると
「…わかった。
シルバの気持ちは、中澤課長にも聞いてもらったから、伝えてもらおう。
でも、彼は犯した罪は償わなくちゃならない。
それはわかるね?」
シルバはこくりと頷いた。
ティッシュでそっとシルバと自分の目元を拭き
「ちゃんと説明できて偉かったな。」
と頭を撫でると、シルバは恥ずかしそうに くふん と笑った。
中澤課長がシルバの目の高さまで屈んで頭を撫でながら言った。
「…銀波ちゃんの思いはちゃんと伝えるよ。
これで銀波ちゃんのお話を聞く時間はお終いだ。
最後までお話しできて偉かったな。
今度はパパとママに聞くから、隣のお部屋で待っててくれる?
絵本やお絵描きの道具も準備してあるから。」
「絵本!?」
シルバが目を瞬かせて椅子から飛び上がった。
タイミングを見計らったかのように、さっきの女性が入ってきて
「隣の部屋で銀波ちゃんをお預かりしています。
終わられたらお声を掛けて下さいね。」
と言って、シルバを連れて行った。
がちゃ
ドアが閉まったのを確認した課長は
「さて…まずは須崎さんがストーカーされてた件からお聞きしましょうか…」
…………………………………
そして黒曜さん、俺…の順番で進められ、全ての聞き取りが終わった。
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