拾ったモノは

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拾ったモノは

あと5分、早く出ればよかった… 心の中で(ルール違反でゴメンナサイ)と呟いて、途中で赤になった信号を無視し横断歩道を駆け抜けながら、俺、葛西(かさい) (てる)は酷く後悔していた。 大事な商談だとわかっているのに、出かける寸前に届いた、谷内田からのラ◯ンを夢中で見てたのが悪かったんだ。 『おーい、葛西!うちの天使達の画像を送ってやる。 萌え死にするなよっ(笑)』 揶揄いのメッセージと一緒に送られてきた、谷内田の実家で生まれたという、もふもふの子犬達の画像。 3匹が固まり丸まって眠っているそのキュートな画面に、鼻血が出そうなくらいに興奮してしまった。 うっわぁーーーーーっ!!! かっわいいぃぃぃっっっ!!! 思わず叫びそうになる口元を押さえて、トイレの個室へ直行した。 一人になって思いっ切り緩んだ顔で画面を撫でてみる。 あぁ…触りたい。埋もれたい。抱きしめたい。 激務が続いて疲労困憊だったここ1カ月で、最高に癒された時間を満喫していたら…あっという間に至福の時が過ぎてしまい…今に至る。 谷内田…お前、鬼か悪魔かっ。 いくら俺が『もふもふLOVE』だからといって、仕事中に あんな天使のような画像送ってくんなって。 ヤバい、マジヤバい。 遅刻なんてしようものなら、今までの努力が水の泡だ! そうだ!抜け道があったはずだ! ふふっ、俺お利口!冴えてるねぇ! 自画自賛しながら、キュインと角を曲がり、細い脇道へと方向を変える。 走りながらチラリと時計を見ると、予想よりも遥かに早く着きそうだ。 じわりと額と背中に馴染む汗。 確か…鞄に制汗シートを入れてきたはず…身だしなみを整える時間もありそうだ。 よし、楽勝! これなら何とか間に合う。 と思い、ペースを下げたその時…
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