51人が本棚に入れています
本棚に追加
かくれんぼ
「どこー? どこにいるのー?」
バス停前の公園から幼い声が聞こえて来て、僕はふと振り返った。
5歳くらいの女の子が誰かを探している。
「たぁくん、どこー? もう暗くなっちゃうよぉ」
女の子の声がだんだん心細そうに小さくなっていく。
僕は停留所を離れ、公園へと向かった。
僕が女の子に声をかけようとした瞬間、若草色のペンキで塗られた柵の向こうでガサゴソと音がした。
「あっ、たぁくん!」
植え込みから男の子がひょっこりと顔をのぞかせると、女の子は嬉しそうに駆け寄っていく。
「降参か? オレの勝ちだな!」
「ずるいよ、たぁくん! 公園の外に隠れるなんて。見つけられないよ」
「中から見える位置ならセーフなんだぞ」
「柵の外はダメだもん! それより早く帰らないと、ママに怒られちゃう!」
二人は言い合いをしながらも仲良く小走りに駆けていった。
最初のコメントを投稿しよう!