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伊藤美鈴
人影に近づくとまず制服に目が行く。僕と同じ高校だ。学校帰りの寄り道にしては、鞄も何も持っていない。
近づくにつれ、夕日に照らされたその顔がはっきりしてくる。
「伊藤さん?」
僕は思わず声をかけた。
同級生の伊藤美鈴さんとは教室で言葉を交わしたこともなかった。
でもお互い名前ぐらいは覚えていたようで「高橋くん?」と疑問形で返事が帰ってきた。
「な、何してるの? えっと……もうすぐ暗くなるよ?」
突然話しかけたはいいが、気の利いた話題など用意していなかった僕は、慌てて当たり障りのないことを口にした。
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