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金之助くんが帰らぬまま、2学期になり一ヶ月ほど経ちました。ある日僕は、今まで話したこともないクラスの女子からプレゼントを渡されました。
「つ、つまらない物だけど。シャープペンシル…。良かったら、もらってほしいの」
そんなに、つまらなそうではない。可愛らしい包装を開けると、なかなかに立派なシャープペンシルが入っていました。小学生のお小遣いで買うには高価な代物で、綺麗なだけでなく色々な機能がついているものでしょう。
でも…あいにく僕は文房具に色々な付加価値を求める方ではない。安い商品を次々使い潰していくのが性に合っているから。こんな立派な物は、もっと他に必要とする人が使えばいいと思いました。
「いらないよ。シャープペンシルなら沢山持っているし」
思っていたことをそのまま伝えました。彼女は、少し戸惑ったように言葉を続けます。
「で、でも。それ、文房具屋さん探し回って…。色んな機能とかついてるみたいだし」
「あいにく、僕はそういうのに価値を求めないから。もっと他に、これを欲しがる人がいるのでは。その人に、渡してあげて」
そこまで言うと、なんか知らんが彼女が声を上げて泣き始めました。後ろで控えていたらしい、女子たちに慰められています。周りでは、クラスメートの男子たちが「泣ーかした、泣ーかした」と冷やかしてきます。
なんのこっちゃよく分からん。泣きたいのはこっちの方だ…と思って振り返ると、鬼のような顔をしたなゆちゃんがそこにいました。その後滅茶苦茶説教されたのは、言うに及びません。
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