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「だから!彼女はあんたの誕生日だから、それで色々探し回ってプレゼント買ってきたっつってんの」
学校の裏庭でなゆちゃんが言いました。最近は警察の捜索もなくなり、再び生徒が出入り出来るようになっています。
「誕生…日…?そうだっけ。忘れてた。でも、それこそ連続する日々のたった一日だし。彼女に、物をもらう謂れもない」
「ああもうこの唐変木が!とりあえず彼女にはめっちゃあたしが謝っといたから、あんたも後で謝りな。な?」
なゆちゃんが怒る理由も、彼女が泣く理由もよく分からない。謝るくらい何でもないけど、こんな状態で謝っても逆効果ではないかなあ…。と思っていたら、たっ君がやって来ました。
「やっぱりここだった。お取り込み中ごめんねえ。聞いたよせっ君、なんか女の子泣かせたんだって?やるじゃん、色男」
人の気持ちが理解できずに泣かせることが、どうして「色男」で「やった」ことになるんだろう。よく分かりません。
「ぼくからも、誕生日プレゼント。はい、ハンカチに刺繍しただけだけど。急ごしらえだから、出来が悪かったらごめんねえ」
そう言って渡された。確かに市販の白ハンカチに花柄の刺繍をしただけ。ハンカチは持っているし、こう言う付加価値に意味がないのは変わらない…けど。
「出来が悪いなんて。そういや僕と違って、家庭科とか超得意だったね。凄く綺麗だ。有り難く貰うよ…」
言ってから、急に泣かせた女の子に申し訳ない気持ちが湧き上がってきました。今からでも謝って、許してもらえるならシャープペンシルをもらってこよう…。
ふと見ると、なゆちゃんがなぜかドヤ顔で僕を見ていました。
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