呪いじゃない

4/4
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
「いつから掲示板が消えたんだろう……そのお陰で呪いも消えたってことか? K師が意図的に呪いを解除したのか、それとも力が無くなってしまったのか……」 「……何かファンタジーなこと言ってる途中でわりーけど、結果良かったじゃん。呪いは解けたってことだろ」 「そ、そうだな」 あっけらかんと話す美馬に乾いた笑いで答える。そうだ、美馬の言うとおりこれで良かったんだ。これで一件落着……。 「……一件落着になんて、できるわけねぇよな……」 「え?」 「だって……俺のせいで美馬は死ぬかも知れなかったんだぞ!? 結果助かったとしても、美馬に物凄い怖い思いをさせてしまったんだ……!!」 「事故に遭ったのはお前のせいじゃねぇだろ。新木がお前を突き飛ばしたって話も、ちゃんと聞いてる」 「違う……そもそも俺が、呪いなんか頼まなきゃこんなことには……」 涙が溢れ出す。自分の愚かな行いを、悔やんでも悔やみきれない。 震える俺の左拳を美馬の右手が被い、そして強く握った。 「もう呪いだなんて、思ってねぇよ」 たった一言だったが、やけにストンと胸に落ちてくる言葉だった。 そうだ。俺も同じ気持ちだった。美馬と過ごした時間も、変化した美馬との関係も。呪われたものだなんて、思っていない。 それくらい俺にとって美馬は、既にかけがえのない存在になっていたんだ。 「――和哉……!!」 母親の涙声が聞こえたのは、それから程なくしてだった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!