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プロポーズを受けた日、すぐに返答できない私は「風の電話」を思い出した。
東北にあるこの電話は、もう二度と逢えない大切な人と心で話ができるという。
謝りたかった、お姉ちゃんに謝って。
謝ったら罪悪感とかそういうのが無くなるんじゃないか、なんて。
その話をしたら、亮さんは悲しそうに頷いて了承してくれた。
電話の話をした時、もしかしたら亮さんが行くんじゃないかって思った。
そしたら私も同じように悲しい顔をしたのかもしれない。
だって、お姉ちゃんは絶対に反対するような人じゃないって、どこかで私たちは、ちゃんとわかっていたから――。
「風の電話」は、心で話すものなんだと、電話機の横に書いていた。
どこにも線の繋がらない黒電話を取り、受話器を耳に宛てて、静かに目を閉じ 耳を澄まして。
風の音が又は浪の音が 或いは小鳥のさえずりが聞こえたなら 私の想いを伝える。
お姉ちゃんの分まで、私が二人を幸せにするって――。
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