2 ウラオモテ

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「お客様の陰口など、冗談でも言うんじゃない。そんな奴は俺のチームにいる資格はない。出て行け」 「す、済みません。二度と言いません」  声は静かだけど、めっちゃ怖い。絶対に自分の上司にはしたくないタイプ。うちの課長は平和な人で良かった。  会議では、にこやかな笑顔に騙されてぼうっとしていたけれど、あれはお金をくれる「お客様」に向けた営業スマイルなんだよね。そんなことはわかっているのに、もしかして、なんて勘違いしてドキドキしていたとか、どこまでお人好しなんだろう。  見つからないうちに、さっさと行こう。  鉢植えの方に背を向けてそっと立ち上がり、見えないように、こそこそカウンターまで歩いて行って、コーヒーをオーダーした。まだ四十分は待っていないと。  少し待ってコーヒーを受け取り、カウンターから離れた窓際の席に向かって歩いていると、後ろから声をかけられた。 「遠藤さん」 「はい」  ゆっくり振り向くと、にこやかな笑顔の彼がいた。ああ、やっぱりイケメンだ。  営業スマイルでもなんでもいいけど、やっぱりイケメンだ。
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