125人が本棚に入れています
本棚に追加
「お客様の陰口など、冗談でも言うんじゃない。そんな奴は俺のチームにいる資格はない。出て行け」
「す、済みません。二度と言いません」
声は静かだけど、めっちゃ怖い。絶対に自分の上司にはしたくないタイプ。うちの課長は平和な人で良かった。
会議では、にこやかな笑顔に騙されてぼうっとしていたけれど、あれはお金をくれる「お客様」に向けた営業スマイルなんだよね。そんなことはわかっているのに、もしかして、なんて勘違いしてドキドキしていたとか、どこまでお人好しなんだろう。
見つからないうちに、さっさと行こう。
鉢植えの方に背を向けてそっと立ち上がり、見えないように、こそこそカウンターまで歩いて行って、コーヒーをオーダーした。まだ四十分は待っていないと。
少し待ってコーヒーを受け取り、カウンターから離れた窓際の席に向かって歩いていると、後ろから声をかけられた。
「遠藤さん」
「はい」
ゆっくり振り向くと、にこやかな笑顔の彼がいた。ああ、やっぱりイケメンだ。
営業スマイルでもなんでもいいけど、やっぱりイケメンだ。
最初のコメントを投稿しよう!