32 選択の日

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 せっかく買ったドリンクも、ほとんど飲まないまま期限の五分前になった。テーブルの上に置いていたスマホを手に取り、連絡先を表示して一呼吸。  やっぱりそれしかないよね。この二週間ずっと考えてきたけれど、どう考えても、それ以外の回答はなかった。ルールでは、ここで電話を掛ける方は選択されなかったことになっている。選んだ方には、直接行くはずだから。だけど、それで終わりじゃないから。  もう一度、言うべきことを自分の中で繰り返してから、一方の名前をタップした。  ワンコール、ツーコール。向こうも待っているだろうに、すぐに取らないのは、やっぱり認めたくないから? スリーコールでつながった。 「もしもし」 「ああ。掛かって来たか」 「あ、あの。まだ結論を出さないで下さい。ちょっとお話ししてもいいですか?」 「どうぞ」  言うべきことを、準備してきた順番で話す。 「この電話で決まったわけじゃなくて、私からお願いしたいことがあります」 「はい」 「私のパートナーになってもらえませんか?」 「え?」  突然のことに、びっくりしているのがスマホ越しでもわかる。
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