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33 ランニングハイ
合宿の前週の金曜日、本社では最後の会議があった日。吉岡君が、最後のデート場所に選んだのは、ビルの地下にあるランニングベースという施設だった。
イケコンが立ち去った後、カフェに座ったまま、スマホで行き先を選んでいた吉岡君は、思い切ったように私に画面を見せて来た。
「じゃあ、ここにしよう」
「これは何のお店?」
「皇居ランをする人のための施設。これから走りに行こう」
「え、なにそれ? 走ろうって言われても、そんな格好じゃないし……」
金曜日は、工場にいるだけの普段の日とは違って、どこに行っても恥ずかしくないように、ちょっとおしゃれして来ている。だから今日も、可愛めのスーツ。
「大丈夫。ウェアもシューズも借りられるし、シャワーやロッカーもあるから」
「なんで、最後のデートは走ろうって結論にたどりついたの?」
悪くはない。けど。不思議な選択。
「遠藤さんってさ、なんかずっと溜め込んでいるものがあるんじゃないかと思ってさ。思いっきり走ったら、スッキリするんじゃないかと思って」
「溜め込んでいる……」
「そう。前にランチ行った時に、カフェの前まで走ってた顔が、すごく楽しそうだったし」
確かに、寒くてビルの横の歩道を走った時、すごく気分が良かった。
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