33 ランニングハイ

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「皇居ランって、一周するの?」 「そう。ぐるぐる何周もする人もいるけど」 「一周って何キロ?」 「だいたい五キロ」  五キロといったら、結構な距離がある。まともに長距離ランをするのは、高校で陸上部をやめて以来かもしれない。 「いいよ。走ろう」 「初回は会員登録がいるんだけど、免許とか持ってる?」 「大丈夫。持ってる」 「じゃ、受付は地下だから。行こう」  カフェを出て、地下につながるエスカレーターの前に歩いて来たので、吉岡君の後ろで立ち止まった。 「ねえ。これから走りに行こうって人が、エスカレーター乗ってちゃダメでしょう。階段よ、階段」 「え、階段?」 「決まってるでしょ」  エスカレーターの隣にある階段を、どんどん降りていくと、吉岡君もあわててついてきた。 「ノリノリで良かった。ドン引きされたら、どうしようかと思ったけど」 「久しぶりに走るって思ったら、なんか元気になってきた」  地下街をまっすぐ進んで、お店のあるエリアから少し離れた場所に、ランニングベースと書かれたガラス扉があった。中に入ると、スポーツジムのような受付。 「一人、新規入会でお願いします。自分は、これが会員証」 「はい。ではこちらの申込書に記入いただけますか」  バインダーに綴じた紙を渡されるので、名前や住所を記入する。 「ウェアとシューズのレンタルを二セットお願いします。あと、靴下も一足は購入で」 「はい。シューズのサイズは何センチですか?」 「遠藤さん、靴のサイズはいくつ?」 「あ、スニーカーなら二十四センチかな」  書類に記入している横で、吉岡君はテキパキと手続きしている。会員証も持っているし、よく来ているのかな?
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