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Tシャツに、スパッツと短パンを重ねばきして、ランニングシューズを履くと、気分はすっかりランナーになっていた。高校生の時のジャージとは違って、カラフルなTシャツと黒いスパッツの組み合わせがおしゃれ。
地上に上がって皇居の方に歩いていると、さすがにTシャツ一枚では寒いけれど、帰宅するビジネススーツの人達の間に、同じようなスタイルの人が、ちらほら混ざっているのが目についた。東京駅に向かうスーツの波に逆らうように、反対の皇居に向かっている。
「結構、走っている人いるんだね」
「うん。夕方から夜に出てくる人は多いよ」
大手門に向かって通りを渡ると、かなりのハイペースで走っている人が次々と歩道を通り過ぎて行く。その後から、職場のグループなのか、集団でゆっくり走っている人達もやってくる。暗い中、黙々と走っている人がこんなにいたなんて。
邪魔にならないように、大手門前の広場まで移動してストレッチを始めた。何も言わなくても、お互い元陸上部だから、走る前は体をほぐすのが当たり前になっている。
「吉岡君は、よく走ってるの?」
「時々ね。ガチな人は毎日何周もしているらしいけど、月に何回か、一周だけ回ってる」
「じゃ、先に走って。後ろついてく」
「了解。行こうか」
ゆっくりしたペースで走り始めた吉岡君の背中を見ながら、初めての皇居ランに出発した。
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