33 ランニングハイ

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 スタートしてしばらくは平坦な道だったけど、竹橋を過ぎたあたりから、登り坂になってきた。皇居の周りなんて、お堀があって真っ平らなのかと思っていたら、結構な急坂を登っている。それでも、吉岡君は一定のペースをキープして走ってくれるから、後ろについているのはとても楽。 「大丈夫? ペース落とした方がいい?」 「平気。もっと飛ばしてもいいよ」  走りながら、後ろを振り向いて声をかけてくれるけど、前見てないと危ないよ。  狭い歩道を通り抜けると、歩道は広くて走りやすいけど、緩やかな坂がだらだらと続くようになった。いつまで走ってもずっと上りというのも、結構つらいかも。上り坂を一気に走ってきたので、だんだん息が荒くなってきた。  元陸上部と言っても五年も前のことだし。あの頃は十代だったし。そろそろ限界かも。  背の低い石垣に挟まれた道を走っていると、やがて頂上を過ぎたらしく勾配が下り坂に変わる。少し行くと、左右の視界がさっと開けて、下の方に大きなお堀が見渡せるようになった  吉岡君は少しずつペースを落として、お堀を見下ろす公園の中に入って行った。 「ちょっと休憩しようか。飛ばし過ぎて怪我しても困るし」 「はあ、はあ、そうだね」  公園に入り、ゆっくり歩いてから止まると、また何も言わないけれど、二人そろって、膝に手をついて、息を整えながらアキレス腱を伸ばし始める。 「ここは、どのあたり?」 「千鳥ヶ淵。だいたい半分くらい走ってきたかな。どう? 久しぶりのランは?」 「すっごく気持ちいい」  やっぱり、好きだな。
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