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「出てくる時に、スポーツドリンク買って来れば良かったな」
「まだまだ平気」
膝立ちからまっすぐ立ち上がり、片足になって反対の足をぶらぶらさせる。まだ腱も筋肉も全然大丈夫。
「そう? ここから先は下りだから、少し楽になるよ」
「じゃ出発しよう。体冷えちゃう前に」
「了解」
また吉岡君を先に、お濠を左手に見ながら走り始めた。
さっきまでの道と違って、どんどん坂を下りて行くので、走るのは楽だった。周りのランナーも、明らかにペースが速い。
桜田門を過ぎて二重橋まで回り込むと、出発した丸の内のビル街が目の前に見えてきた。広場の先に壁のように建っているビルが、キラキラと輝いていてとってもきれい。でも、あの灯り一つ一つの下に、実は残業しているビジネスマンがいると思うと、ちょっとおかしくなってくる。『ああー、もう帰りてー』とか言ってる人もいるんだろうな。
ここからは、大手門までまっすぐに見通せる平らな道だった。
「ねえ、吉岡君」
「なに?」
道幅が広くなったので、横に並んで走りながら話しかけた。
「ここから、あそこの大きな看板まで、競争しよう」
「え? 競争って」
「行くわよ。よーい。スタート!」
言うのと同時に、全力でスパートした。
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