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34 結論と
「あの日、走りに行こうって誘ってくれて、思いっきり走って、それでスッキリしたの。やっぱり私は、こっちなんだって」
最後のデートの日に、大手門スパートで勝ったことを思い出しながら、受付前のベンチに座って吉岡君に話し続ける。今日はクリスマスイブだけど、お楽しみの前に、私の選択した結果をちゃんと話しておかないと。
「ありがとう、俺を選んでくれて」
「でもね、もう一つ選択しないといけないことがあったの」
「もう一つ選択?」
「そう。私の生き方を変えるかどうかっていう選択」
英里紗の提案は、吉岡君にはまだ話していなかった。
「この間、英里紗が帰国して会った話はしたよね」
「うん」
「英里紗はね、来年MBAを取ったら、向こうでビジネスを始めるんだって」
「何の?」
「アメリカに進出した日本企業に、アメリカでのSDGs関連の規制とかガイドについてアドバイスする会社」
「すごいな」
「それでね、私も参加しないかって誘われたの。五条インダストリーを辞めて、英里紗の会社の日本側のマネージャになれって」
吉岡君は、びっくりした顔でまじまじとこちらを見ている。
「SDGsって、遠藤さんも学生の時サークルで勉強してたって話だったけど、それで、その話に乗るつもり?」
「どうしようかなと、ずっと悩んでた」
黙って聞いている。
「でも、どう考えても、同じ結論しか出なかったから」
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